新民法に対応した賃貸契約の原状回復、トラブル対処法で知っておきたいポイント
目次
新民法に対応した賃貸借契約の作成方法について
先日、賃貸借契約に詳しい立川正雄弁護士のセミナーに参加してきました。
いろいろ書籍を読んでいたので今回は初めてお会いするので楽しみにしておりました。
まず、驚いたのは「原状回復」という言葉は民法に明文化されておらず、判例や学説があっただけだということです。
今回の改正でこうなりました。
民法第621条(賃借人の原状回復)
賃借人は、賃貸借を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、この限りではない。
では自然死での原状回復の義務は?
借主が突然の心臓発作で孤独死した場合、相続人に原状回復費用を請求できるでしょうか?
答えはノーになります。
なぜなら孤独死は故意・過失ではないため通常認められないと考えられているからです。
この上記、民法の改正のただし書きでは「その損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、この限りではない。」場合のみ原状回復義務が発生すると定めています。
つまり部屋の中で自殺をした場合は故意・過失に当てはまります。
たばこのヤニによるクロスの汚れについては?
喫煙等によるクロス等がヤニで変色したり臭いが付着している場合は、通常の使用による汚損を超えるものと判断されます。
ただ、国土交通省のガイドラインではクロスは6年で1円価値になります。
詳しくは別のブログに書いております。
ぜひ覗いてみてくださいね。
連帯保証人の限度額の義務化とは?
改正により保証契約書面に連帯保証人に対する保証の限度額を記載することが義務化されます。
今までは連帯保証人は印鑑証明書、保証人の承諾書に署名、実印を捺印しておりました。
ただ最近では契約者が連帯保証人にお願いする煩わしさや管理会社の業務効率化を含めほとんどの契約は保証会社を利用している状況です。
当社の近くの老舗不動産会社の慶応不動産や流通不動産などでも保証会社は必須になっております。日本賃貸住宅管理協会の調べでは2018年下半期は首都圏の保証会社利用率は100%!になっております。
家賃減額については?
もう一つ改正することで知っておくことがあります。
それは「賃借物の一部滅失等による賃料減額等」になります。
第611条
賃貸借の一部が滅失その他の事由により使用および収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることできなくなった部分の割合に応じて減額される。
とあります。
ただ、やみくもに不具合が生じた場合に減額請求に応じなければならないわけではありません。
最短でできるようにオーナー様、管理会社が責任の義務を果たしているかが重要な論点になるようです。
例えば、夏の日にエアコンが故障した入居者様への対応です。複数のエアコン業者にお願いしたものの、他の予約が思った以上あり期間を要したときなどが挙げられます。
また、入居者の故意過失による不具合に関しても減額請求は認められておりません。
家賃減額の相場・事例は?
オーナー様と入居者様との間に管理会社が入り家賃減額の交渉をしていきます。
減額の目安としては日本賃貸住宅管理協会が「賃貸減額と免責日数の目安」という具体的に状況別に規定されております。
状況 | 賃料の減額割合
(月額) |
免責日数 |
トイレが使えない | 30% | 1日 |
風呂が使えない | 10% | 3日 |
水が出ない | 30% | 2日 |
エアコンが作動しない | 5,000円 | 3日 |
電気が使えない | 30% | 2日 |
テレビ等通信設備が使えない | 10% | 3日 |
ガスが使えない | 10% | 3日 |
雨漏りによる利用制限 | 5~50% | 7日 |
例えば家賃10万円の物件トイレが3日間使えなくなった状況があります。
(紙以外の物を流したりしたという故意・過失で無い場合)
家賃10万円×減額割合30%×日割り3/30日-免責日数1日=2000円が当月の家賃から引かれます。
今回の民法の改正は借主寄りに考えられているようです。オーナー様はしっかり民法の改正を理解しておくことが今後の賃貸経営で重要になります。ご不明な点がございましたらお気軽にお問わせ下さいね。(^○^)
賃貸経営についてはこちら